絵を描く人に是非読んでもらいたい本

絵を描く感覚を養う方法にあふれた比類なき本
「デッサンの道しるべ」ニコライデス著

今日紹介する本は、アメリカの画家でもあり指導者でもあった、キーモン・ニコライデス(1891-1938)によって書かれた絵を本格的に学ぶ人のための本です。
前のブログで紹介した本(アートスピリット by Robert Henri)が、絵を描く上での啓蒙書だとしたら、この本は絵を描く感覚を養う実践書と言えるでしょう。
私事ですが、もう30年以上も前に本屋で偶然この本を見つけ、その内容のすばらしさに感動して、この画家がかつて教鞭をとっていた学校なら素晴らしいに違いないと、ニューヨークアートスチューデンツリーグに留学したのですが、その選択は間違っていなかったと、この本には感謝しています。
そんな素晴らしい本ですが、今回出来るだけ多くの人に知ってもらえればと記事にするにあたりネットで検索してみたのですが、今は絶版になっており当時定価2200円の本がアマゾンで中古で何と1万6千円という値が付いました。
ネットで絵を学ぶ本を検索すると、ほとんどがハウツー本でこんな良書が絶版になるとは残念の一言に尽きます。
それでもこの本は有名なのでネット上には色々とコメントや情報が得られます。
ここでは私なりに素晴らしいと思った部分を引用してみます。

描くことを学ぶには一つだけ正しい方法があるのだが、それはごく自然なものである。熟練とかテクニックの問題ではない。美学や概念も関りがない。必要なのは正しい観察をすることー私が言わんとするのは、全ての感覚を通してあらゆる種類のものに具体的に触れることーだけであるる。 (中略) 芸術的創造の本質について、インスピレーションが働く目に見えない過程について、何かを見出さなくてはならないのである。(中略) 美術は美術自体よりもむしろ現実そのものに関わるべきであろう。私たちが数を問題にするとき、一種のシンボルを使うことになるわけだが、それが実感をもって受け取られるのは、シンボルが現実になった時だけである。これは絵画の諸原則でも同じことである。(中略) 理論を理解するだけでは十分ではない。数多く実地にこころみることが不可欠であり、本書の”課題”はその実体験となるように構成したものである。

デッサンの道しるべーはじめに

見ることは知ることに依拠し、知ることは君の五感のすべて、つまり、君のすべてを通して不断に現実を取り込もうとする努力から生まれるものである。内容の真実を歪める外見にこだわってはならない。″見たとおりのもの“の横暴は排除しなくてはならない。芸術家の求める絶対的な才能、揺るぎない特色は、眼だけで得られる以上の、より完全な事物の理解に基づくものである。(中略) 世の中にはいつだって、君が出会うまで発見されていないー誰も口にしたことがなく、描かれたことのないー大きな真実がある。

デッサンの道しるべー最後に

これは実践の書であるけど、ただのカリキュラムではなく、その実践を通して目には見えなくても感じ取られるものに感覚が開かれるよう、読んで実践する者を絶えず鼓舞してくれる。
思うにここに著者の絵や人生に対する真摯な態度が本を通じて伝わってくるので、アメリカでは名著として時を超えて伝えられているのだと思う。
最初に書いたように絶版で入手出来ないか、出来てもとても高価なので、読みたい人は差し当たり図書館にでも行って探してみるといいかもしれない。
それでもどうしても手に入らなくて困っているという人がいたら、下記の私のサイトにでも連絡してきて下さい。